名作を10分で読む、といった要約本の類は
名作を本当に駄作にする。
どれだけの面白い作品も要約で水の泡…なので、
要約本の類は基本的に読まないのだけれど、
斉藤美奈子の本は別!
『妊娠小説』以来のファンです。
ただ、彼女の時事ネタはいまひとつなので、
あくまでも本に関する文章や本は彼女の読書量にただただ脱帽。
彼女の本は全部読んでいるつもりだったけれど、読んでいない本があった。
『名作うしろ読み』。
名作うしろ読み (2013/01/24) 斎藤 美奈子 商品詳細を見る |
これがもう本当にすごい!面白い!彼女の書評は鋭く、きつく、
そして、ちょっとおちゃらけている。
網羅している作品は130超え、ちなみに私が読んでいたのは30作品…
近現代の日本の作家、森鴎外などから、海外の古典に、
彼女の読書幅の広さに敬服した。
彼女こそ、”活字中毒”、私なんて甘かった。
『ダ・ヴィンチ』で面白い本がない、と思った人はこれで
年末年始の本を探してみては?と思うほどにおすすめ。
文学部の大学生はここにでている日本の作家は読んでおきなさい!と
宿題に出せるくらいに網羅されている。
森鴎外の『雁』の主人公を”ヤな男”と評し、
(森鴎外の作品でてくる男性はみーんなヤな男だらけですが…)
「谷﨑はやっぱり変態だわ」と毒づく。豪快すぎて、しかも
指摘が的確すぎて、その文章だけで笑え、
円地文子の『女坂』まである。
(奥さんに妾を探させ、自分の息子の妻にまで手を出し、
妾たちの世話を奥さんにさせ、その奥さんの復讐劇の結末は
現代の私たちには呆気にとられるもの。私が本で”悔し泣き”した
唯一の作品!)
『ハムレット』に『若きウェルテルの悩み』まである。
『若きウェルテルの悩み』なんて、恋愛に悩む人は必読ですよ!
「…これが恋?!私のはなに?」と言葉を失う。
ここまで思い詰めてこそ、若者の恋です!
(若者には、”バカモノ”とルビをふっておくけれど。)
いままで読んだ本を彼女の毒舌とともに振り返ることができた。
安倍公房の『砂の女』が愛読書、と発言した男子学生にサーっと女子が引いた
のを思い出したり…
桜をしばらく楽しめなかったことなど、懐かしい。
そして、読みたくなったのが宇野千代『おはん』。
タイトルは女性名だけれど、主人公は男で芸妓と不倫して、妻と別れた男が
また妻に心を寄せる…女二人の間で揺れる男の作品らしい。
「俺が阿呆なんだ」と言いながら、二人の女に言い寄られちゃってさ~
という話らしい。
映画化もされ、その男性役を石坂浩二がしたとか。
なんですか!その配役の妙は!と膝を打ちたくなった。
読みたい本がないの~と思っている人には、
斉藤美奈子の『名作うしろ読み』、おすすめ!