ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

『親の介護、はじまりました』

ズドーンと落ちてしまう本がある。
あるあるすぎて、しんどい、そんなジャンルは私にとって”介護”。


実母の介護をするけれど、昔かたぎで暴力的な実父に苦労し、
両親の不仲に疲れ…という話。
まるで私の祖父母を見ているかのようで読み終わっても
ため息しか出てこない。

祖母が施設に入って、そろそろ10年になるけれど
元気にやってきていた祖父もかなり痴呆の症状がでてきたように思う。
痴呆の症状か…と私が憂鬱になるのは”執着”。
その執着がすさまじい。
「俺が買ったお菓子を○○が食べた」という話から始まり、
「俺のタバコがない」
「俺の漬物がない」と、キリがない。

以前、祖父が「持って帰って、こどもと食べろ」と言って渡してくれた
漬物をもらって帰ったら、
「全部、持って帰ったのか?食べるのを楽しみにしていたのに!」と
いう電話がきた。
1日おきに3回ほど…。
祖父は毎回、初めて言うかのように語り、初めてのように私も聞き、
「それは悪いことをしたわね~」と3回は言った。
4回目、「おじいちゃんがあげるって言ったから持って帰ったんじゃん!!」と
私もついに怒ってしまい、祖父が食べたくて仕方がなかったという漬物、
全く同じものをネットで注文した。
その漬物、半年経ってもまだ冷蔵庫にある…。
「この漬物、そろそろ食べたら?」とたまに聞くと、
「いるなら、持って帰って食べても良いぞ」と祖父に言われるけれど、
恐ろしすぎるので絶対に持って帰らない。

お盆に帰省したときも、「お中元でもらったハムとカニを食べよう!」と
祖父が言った。料理しましたとも!
カニは食べにくいから、祖父にほぐしてお皿にたっぷり入れた。
現在、「カニが冷凍庫いっぱいあったのに、
わしが食べたのは足1本!」という話をエンドレスで語られる。
だーかーらー、ほぐして入れたって言ったでしょ!!と
4回に1回くらいは、つい怒ってしまうけれど、
「そうだったか?」と相手は初めてのように驚いている。

のれんに腕押しのような会話、続けるのはかなりのエネルギーがいる。
だからといって、会話をしなければ、ますます痴呆は進むだろうし、
以前は祖父に週に1回30分ほどだった電話を現在は週3回10分程度でしている。
それでも、徒労感はすごい。
今日も話題は前回と同じだった…
また、漬物とカニの話題がでてきたよ。どれだけ執着するんだ?と
疲れ果てて電話を切った。

「苦手な本のジャンルは?」と海外のパルに聞かれると、
「介護!!」と言いたくなる今日このごろ。