ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

『ケーキの切れない非行少年たち』

こどもたちが園児だった頃に知り合った育休中の小学校教諭が
「いまの教育現場にはグレーゾーンの子が10人に1人はいる気がする」
と話していた。
そんな、まさか!
それは言い過ぎではないの?
私の子ども時代よりも児童数も減っているのにと思っていた。
ええ、過去形。

こどもたちが3人小学生になったときの実感は…
ちょっとちょっとちょっと!!と、タッチの二人になりそうなくらい
グレーゾーンの子がいる。
グレーゾーンって、学習障害の診断がつかない子だという認識だった。
診断がつかないとどうなるか。
その子は問題がないとみなされ、なんのサポートも受けられない。
しかし、そのこはやはりサポートがいるわけで、
そのサポートは先生だったり、クラスメートだったりがする。
それは社会の縮図で、人にはそれぞれ得手不得手があるから、と
私は思っていた。
花子と太郎のクラスにも「グレーゾーンでは?」と思う子が数名いた。
彼ら彼女らを長く知っているので「よく頑張った!」と
親戚のおばちゃん気分で私が涙出そうになることもあった。

しかし、次郎のクラスはおかしい。
グレーゾーン、多すぎない?と保護者で話題になるほど多い気がする。
そうなると、どうなるか。
算数の時間に先生が3人入ったりする…。
校長先生までお出ましになって算数を教えているらしい。
それなのに進まない割り算、なんていう話に呆然とする。
なんで?先生が3人入ってなんで進まないの?なんで?とつい聞くと、
「九九を覚えている子が少ないから。」と次郎が言い、
いや、九九覚えてないと割り算に分数にと、
これからずっと困るんですけれど…と絶句する。

算数だけではない。国語の学期まとめテスト、
漢字だけ50問各2点の100点満点テスト、「6点のこがいた!」と
次郎が話して眩暈がしたり。
3年生の漢字テスト、どれだけむずかしいか…そもそも習った漢字が
それほど多くないから1つの漢字が、2,3回出てくる。
草、草原、という具合に。
だから漢字3つ覚えていたら10点は取れたのでは?とまとめテストを見て
思った。
一体、なにがどうなって、こうなっているんだ?
私の住んでいる学区は一応、田舎でおとなしく教育熱心な保護者が多い
ハズなのに、と最近、疑問に思っていた。

そういうときに気になったのは『ケーキの切れない非行少年たち』。 

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

  • 作者:宮口 幸治
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/07/12
  • メディア: 新書
 

 この本、実は読んでない。
読んでいないけれど、ネットの書評でもう十分なくらい詳しくなった。
読書した気分のダメな代表例。

本屋で立ち読みしたけれど、買う気にはならず…。

『ケーキの切れない非行少年たち』の著者・宮口幸治さんは、
公立精神科病院に児童精神科医として勤務した後、
2009年から発達障害・知的障害を持つ非行少年が収容される医療少年院に6年間、
女子少年院に1年間勤務していた。

 

なぜ非行少年たちは“ケーキを3等分出来ない”のか――医療少年院で受けた衝撃 | 文春オンライン

そこで、境界知能の子たちと出会い、衝撃を受ける。
現在、知的障害と呼ばれる人々はIQ70未満らしい。
1950年代の一時期、IQ85未満を知的障害としていた時期もあったが、
それでは知的障害の人が多すぎるということで、IQ70未満にした。
IQ70未満の人は大体、人口の2%で、IQ 70~84に相当する人は
大体人口の14%、彼らを境界知能、という。
現在の社会生活を営むにはIQ100程度が必要で、
境界知能の人たちを著者は”忘れられた人々”とよんでいる。

ちょっと不安になって、次郎にケーキよ、と円を描き
これを「花子と太郎と次郎で3つに分けて」と言ったら完成したのはこれ。

被験者:分母が同じ分数の加減のみできる公立小学校3年生、算数が得意な次郎。
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大部分は次郎(オレンジ)。残りは花子(黄色)と太郎(緑色)。

すごい3等分。
言い方を間違えた。
「ケーキを3日に分けて一人で食べるなら?」
次郎が描いた3等分はこれ。被験者は同じく次郎。
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自分ひとりで3等分ならこうなるのか…。

 問題がある子を早期に発見し、
向上させるトレーニングも著者は提案しているらしい。
教育や行政の狭間で苦労する子が減ることを願うばかり。