こどもたちに「誰の時間も奪ってはいけない」と
よく言う。
”時間を奪われた”と思ったときのメイさんの怒りはすごい、
と夫にも私はよく言われる。
そうはいっても、私が奪われた時間なんて、しれている。
松橋事件で無罪判決は確定した宮田浩喜さんに比べたら。
唯一の有罪証拠が自白で、
無罪を主張し続け、13年の刑に服し、
その後も検察に再審確定を引き延ばされ…
無罪判決がでたのは34年後。
本人はすでに認知症となっていて介護施設。
彼の過ごした刑務所での時間、犯罪者扱いされた年数、
34年という年数の重さ。
テレビでは往年のアイドルの引退報道をしていたけれど、
彼の悔しかっただろう34年間を考えると、
なにもかもが浅薄に感じる。
彼に判決を下した裁判官のコメントなども新聞には載っていた。
そのときにでていた証拠で良心に基づいて判決をくだした、と。
無罪なのに13年間の刑に服した彼に
良心から謝罪をする人は果たしているのだろうか。
彼の年月を一体、なんだと思っているのだろうかと
新聞を読んで悔し泣きをしてしまった。
彼は遠くの他人ではない。
すべての人がなりうる可能性がある。
自白を強要され、検察の証拠開示の消極性の中、裁判は行われ
推定無罪の法則なんて、きっとみんな忘れているのだろう。
なんだか消化できない思いが残る。