ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

『スゴ母列伝~いい母は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける』


”母性”という言葉は女性学の中でとても難しい。
それは本能ではない。
誰でも簡単に持てるものでもない。
生まれた瞬間の我が子を胸に抱き、「かわいい!!」と
私も言えるのだろうと思っていた。
第一子を最初に見たとき、「げっ…これがお腹にいたのか」と
思った。かわいくない。全くかわいくない。
話に聞いていたのと違うけれど…と焦った。
「産声かわいいでしょ?」と看護師さんに言われ、
「恐竜みたいで…」と、陣痛の間、見ていた『ジュラシックパーク』の
恐竜の鳴き声にしか思えなかった。

恐ろしいことに、産んだ瞬間に”母”になるので、
「はい、お母さんお願い」となる。
「それは僕は苦手」と夫が逃げていく新生児の爪切りに始まり、
トイレトレーニング、病院へ連れていくこと、学校の面談…
(一体、夫は何が得意なんだ?!とたまにキレるのも当然な
”苦手”なものの数々)
15年ほど母をやっているけれど、八面六臂なママさんたちを知ると、
「なんで、私はこんなに完ぺきにできないのだろう」と思う。

東大にこども4人を入学させた佐藤ママは反抗期が
こないようにした、と本に書いてあった。
東大に子ども4人入れて、反抗期もなし?いや、もう完璧ですね…
から二の句が継げない。そういうとき、
ちょっとダメなママに癒される。
そんな時に読んだのが『スゴ母列伝』 

スゴ母列伝~いい母は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける

スゴ母列伝~いい母は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける

  • 作者:堀越 英美
  • 発売日: 2020/03/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 完璧なママ、というスゴ母ではない。
なんだかちょっと違う方向へすごくいっている母たち。


例えば、芸術は爆発の岡本太郎の母、岡本かの子
作家として有名…なのか?私は夫婦+1、いや+2の関係を
していた女性として知っていた。オープンマリッジの先駆け?
(夫と愛人二人、しかもかの子の愛人)
もっとお色気むんむんの人かと思ったら、実はとても純情な
かわいい人だった。
夫と自分の愛人二人と住んで純情…って?と思うけれど。
どのくらい純情でかわいいかというと、

普通のおばさんがこんなこと語りだしたら頭をはたかれて
しまいそうなスレスレのかわいさ 『スゴ母列伝』

まさにこれ!「うるさいわ!」と頭はたかれるで、
と言いたくなるレベル。
しかし、岡本太郎は母をよく理解していた。
(そういうかわいい子っぽいのはやめなさいと息子に
手紙でかの子は怒られている。)
母親に生意気な口を利く男子高校生たちに憤っている。

一人の女性が、そんな小生意気な口をきく男の子をそこまで育てる
(中略)
その思いや辛さの、一粒の泪ほども汲み取ってやろうとしないで
なんでもわかっている、などとウソぶく傲慢、非人間性
許せない。 岡本太郎『一平かのこー心に生きる凄い父母』

 

言うたって!どんどん言うたって!と全国の母の叫びが聞こえてきそうな
この文章  『スゴ母列伝』

といった具合にスゴ母がたくさん。
斎藤美奈子の『妊娠小説』を想起させた。
いろんな母がたくさんでてくる。全く羨望とか憧憬とか嫉妬とか
感じない、別世界のスゴ母。
「私でもできるかも?」なんて、これっぽっちも思わせない。
作者のツッコミも面白い。関西のおばちゃんか!と
つい読んでいて突っ込みそうになる。
斎藤美奈子の『妊娠小説』と大塚ひかりを足して2で割ったような
読み応えのある一冊。

 全く知らなかったリリアン・ギルブレスに一番、驚いた。
20世紀初頭に労働環境の合理化を進めたマネジメントコンサルタント
フランク・ギルブレスの奥さん。
映画のチケットも1ダースなら安い、こどもも1ダース育てたほうが
コスパ最強!という発想でこども1ダースのパパ。
マネジメントを仕事にしつつ、実践もしているところがすごい。
リリアンはこども12人を生み、心理学の博士号も取得。(6人目のとき)
「たった3人の子育てで生意気言いました…」な気分になった。