ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

ジェンダーバイアス

ロンドンのパルに聞かれた。
"Have you talked to her yet about the problems
she will face being a female chemist?"
(女性化学者として立ち向かうことになる問題について
花子にはもう話した?)
"You don't want to put her off, but its good to kinds of...
forewarn."
(花子の集中の邪魔をしたくないのだろうけれど、
ある種のよいことだと思う、、、警告は。)

put offといえば、”延期”しか頭になかった私、
ロンドンのパルのput offにびっくり。
そんな使い方あるの?!と英英辞典で調べたらあった。

to disturb sb who is trying to give all attention to sth that
they are doing.
(誰かが何かを集中してしようとしているときに邪魔をすること)

英英辞典に例文もしっかりあった。
Don't put me off when I'm trying to concentrate.
(集中しようとしているときに邪魔するな!)

ロンドンのパルが花子に伝えるべきだと繰り返したのは、
about gender bias(ジェンダーによる偏見について)
ロンドンのパルは博士号取得の検討も始めたものの
大学においてもあるジェンダーによる偏見に落ち込み、悲しんでいた。
女性が多い文系学部でもこうなのよ、理系ならもっとひどい
状況である、と。それはイギリスでも同じらしい。

”A lot of young women give up STEM here because of the bad
attitudes they have to fight against all the time.”
(とても多くの理系分野の若い女性たちは常に失礼な態度と
戦わなければならないから諦める)

STEM:"Science, Technology, Engineering and Mathematics"
科学・技術・工学・数学の教育分野の総称

花子は理系の学部に進み、研究をしたいと思っていることを
ロンドンのパルに話すと、
"It means she will probably have to work twice as hard to be
taken as seriously as her male academic peers."
(それは、男性の同僚より2倍まじめに働かなければいけないって
いうことを意味するのよ。)

ロンドンのパルの話を聞きながら、「すべての差別の根底には
男女差別がある」と言ったのは誰だったっけ、と考えていた。
アメリカで話題のBLM(Black Lives Matter)、黒人差別。
それでも、黒人の中では男女差別があり、人種差別の中にも
男女差別。日本の中にもあるとも!
私自身は男女差別に最初に気づいたのは就職活動の時だったので、
大学にいる限りは、アカデミックな世界では男女差別はない?と
思ったりもしていたけれど、そうではないことは東京医科大学
教えてくれた。

妊娠中のロンドンのパルの赤ちゃんはまだ性別不明。
だからきっと、「この子が女の子だったら、どんな世界になるのか」
という不安でいっぱいなのかもしれない。
「ようこそ赤ちゃん!人種差別に男女差別、未知のウイルスに
あふれる危険な世界へ!」とは言えない。

「あなたはジェンダーの偏見について花子に何を伝えている?」と
ロンドンのパルに聞かれたけれど、実は”伝えていない”かもしれない。
「女の子は数学が苦手なのよ」と数学で学年2位をとった
花子に言える?理科も常に学年3位以内ですけれど。
国語は聞かないであげてほしいけれど…。
アルドール反応って…」と有機化学を中2で語る花子に
「女の子は理科が苦手なの」と言うの?
東京医大の女子学生差別のとき
「女子はコミニケーション能力が高いって、それはどんな機械で
測定した数値?理系なのに”コミニケーション能力”だって…」って
花子は曖昧模糊な”コミュニケーション能力”に失笑していたけれど。
女性が医師として働き続けられないのは社会のシステムや
病院のシステムに問題があるわけで女性医師の問題ではない!
と指摘しない教授たちや女性差別にどっぷり浸かって気付かない
人たちに私も失望した。

ロンドンのパルは「ショックを受けないためにも
世界は全く公平ではないことを少しずつ花子に伝えるべきよ。」と
繰り返し、アドバイスしてくれた。

理系の友人に「理系学部で男女差別はあった?」と聞くと、
「就職のときかなぁ…」と。
それでも、「育児はやっぱり女性がしたいし、男性では
こどものちょっとした変化にも気づかないだろうから…」と語るので、
いやいや、それがジェンダーの偏見だから!とツッコミを入れた。
”ちょっとした変化に気づかない”とか
”育児が苦手”って、そこに男女の差異はないよ。
あるとしたら、幼いころから「周囲に気を配りなさい」とか
「細やかさ」を求められた女性たちが後天的に身に着けたものだろう。
彼女の娘は「結婚って、家事も育児も仕事もすることになって
女性が損するだけね。」と彼女を見て小学生ながら言うらしい。
我が家の花子は「お母さんって、人生楽しそうでいいわね~」と
心底うらやましそうに言うけれど。

ロンドンのパルは妊娠により仕事も彼女自身も含めて過小評価された、と
落胆していた。女性差別を改めて感じたらしい。
花子もいつか女性差別を感じて落胆するかもしれない。
ジェンダーバイアスジェンダーの偏見)にとらわれず
個々の能力を評価する、と私も心に刻みたい。