ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

忙しいとき

「人生で忙しいときって、あるよね?」と
ポルトガルのパルが手紙に書いていた。
彼女はロンドンで一家の大黒柱として専門職に就いている。
肩書は”ドクター”。
彼女の専門職はコロナウイルスのいま、すごく忙しいらしい。
充実してそうだなぁ、と私は思っていたけれど
彼女の母は、女性には家事や育児をして
夫を支えてほしいと思う人で、そんな娘に
失望しているらしい。
仕事に家事に育児にと彼女は大忙しの中、
母親からそんな電話をもらい
どっと疲れた、ということが手紙に書かれてあった。

「あなたの両親は?」と聞かれた。
お答えしましょう!
私の両親はいま二人とも入院しています。

母の入院内容だけでも看護師のママ友に
「あぁ…」と残念がられるレベルで、結構、まずいらしい。
っが、それを上回る父の状況に「えぇ?!」と言われた。

始まりは、こけて骨折したこと。
ギプスをして戻ってくるのだろうと思ったら、
そこから歩けない、動けない、言語もおかしいとなり、
MRIを何度か撮り、と繰り返している内にせん妄の
症状が表れ始め…間に外科手術も行われ…
なにがどうなっているんだ?と私も思うくらいなので
本人もそうだろう。
しかも、父は66歳…。まだ66歳なのに?!

父のせん妄はますます激しくなり、電話をすると
「財布をメイの家に忘れて困ってる」と言う。
我が家に最後に来たのはほぼ1年前ですけれど…。
次に電話をすると、「いま韓国から日本へ帰る船の中」と。
…父は船で外国へ行ったことはないはずなのに。

父にせん妄の症状が激しく出ると、看護師さんに
母が呼ばれるらしい。
そして、今日は私に父が電話をしてきた。
「会社に電話して、田中に段取りを言わないといけないのに
お母さんが仕事はもう退職していると言う。」と。
認知症の人は否定してはいけないので、
そうかそうか、と聞いておく。

父はどうやら6年前かそれ以前に戻っているらしい。
「ところで、花子さんの年齢は?」と聞いてみたら、
「花子は14歳じゃろ?」と正解が返ってきた。
おぉー!とびっくり。
「花子が14だったら、私はいくつ?」と聞いてみた。
「あれ?」と返ってきた。
父が60より若く、花子が14歳だったら、花子を私が産んだのは
高校生か?という話になってしまうので、
父も気づいたらしい。
「あれ?」と言っていた。
父は計算ができて、違いに自分で気づいたのか!

祖母が認知症になったとき、あっという間に孫の私は消えた。
私は以後、私の母の名前で呼ばれ続けた。
しかし、父は孫の名前も年齢もしっかり記憶しつつ、
父がまだ働いている。多分、バリバリと働いていた年齢らしい。
まるでパラレルワールドに父だけ住んでいるかのように
自由自在に行き来している。

父と母が入院し、父のせん妄が続いているけれど
コロナウイルスのため面会は禁止。
その一方で住替えのために法務局や金融機関にも行き、
新居のための家具を選びに行ったり…
人生で忙しいとき、今だよいま!と私もポルトガルのパルに
手紙を書いた。