ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

『国境なき医師団を見に行く』

数か月前に買っていたけれど、なんだか読まずに
本棚に置いていた本。

その間に高1と中2のこどもたちが読み、
「すごくよかった。」と本の趣味の違うこどもたちが
それぞれに言っていたのが意外で、重い腰を上げて読むことにした。

いとうせいこう氏が「国境なき医師団」の活動内容を取材しに、
各地へ行く。
ハイチ、ギリシャ、フィリピン、ウガンダ
2016年の取材なので、これらの国々だけれど、いまならきっと
ウクライナ難民の話も入ってくるだろうなと思いながら読み、
ふと気づいて衝撃を受けた。
2016年から2022年になっても、難民は減ってないという事実に。
寧ろ、状況は悪化しているだろうということに。

国境なき医師団」は医師が集まった集団だと思っていたけれど、
本書では電気技師や運送の手配、政府との交渉など医療従事者以外の
人が半数を占めることも紹介されている。
当然といえば当然だけれど、知らなかった事実だった。
そして、医療行為が行えるように医療従事者以外の働きが
欠かせないことも詳しく書かれていた。

本書に流れる空気感はいとうせいこう氏ならではのつかず離れずの
空気感を感じるけれど、いくつか自分ではどうにもできないもどかしさや
腸がねじれるような悲しさ、著者の慟哭を感じる場面があった。
この虚しさに国際支援から脱落する人も多いだろうし、
続けられるには精神的なタフさもいるのだろうなと思った。

この本のおすすめポイントはなによりも押しつけがましさのないところ。
ただ事実を伝える。
しかし、上から目線ではなく、他者に敬意を払う。
援助をしてあげている、と思う限り、相手に敬意は払っていないし、
私はがんばってあげている!という自己犠牲も上から目線の発言になりやすい。
国境なき医師団」」の活動はどちらにもなりやすい中で、
いかに相手の文化への配慮を欠かさないようにしているかなどが
本書で書かれていて、発達途上国への支援について
意識改革をさせられる1冊だと思う。
中高生のときにこれを読めば国際支援とは?と考えさせられるだろう。
若者にこそおすすめの一冊。