ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』

Amazonのいやなところは、
「なにこれ?!」みたいなぴったりそのとき読みたかった本を
いままで興味を持ってもいなかったようなタイトルから
「はい、どうぞ」とおすすめに出してくるところ。
なんでわかったんだ?!
AIと見せかけて、本当はPCの向こう側にベテラン司書さんが
私のデータからおすすめしてきているんですよね?
もしや、私と友人の愚痴電話を盗聴した?と聞きたくなる。
そんなAmazonでベテランの能力高い司書さんにおすすめされた本、
タイトルからしてポチっとしてしまった。

アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』

 

2012年の本とちょっと古めではあるけれど…
10年経っても状況は全く変わっていないので大丈夫。

家事労働の大半を担うのは女性で、
女性の家事労働は生産性がないということでGDPに入っておらず
GDPに入っていないだろうと思っていたけれど、
実際に入っていないと知り、衝撃を受けた)
世界の女性の20%以下は貧困ライン以下で暮らしていて、
グローバル経済の頂点で政治的、経済的な影響力を占める
超エリート層には女性がほとんどいない、
そんな世界でジェンダーが関係ないわけがない。

経済学を学んだ夫は言う。
市場経済では利益の追求が行われるから、
ダメなものはその内、淘汰され、良い企業が残る、と。
ゲイリー・ベッカーなどのシカゴ学派の経済学者は
市場経済には合理性がある、と。
だから、黒人差別も人種差別も市場経済においては
淘汰されるだろう、と。
白人ウエイトレスしか雇わないカフェと黒人ウエイトレスだけのカフェ、
価格競争に勝つのは黒人ウエイトレスのカフェ(労働単価が安いから)で
そうすると客も安いコーヒーが飲める黒人ウエイトレスのカフェに行き
白人ウエイトレスだけのカフェも宗旨替えをする、と。
利益追求の市場経済で結果的に人種差別まで解決!
・・・とはなっていないことは誰もが知っている。

友人が言った。
「夫に俺くらい稼げるのか?と言われた、」と。
どっかーん!!!と爆発しない彼女はすごい、としか言えない。
朝から夜遅くまでフルタイムで仕事をこなすこども3人いるパパさん、
彼が仕事をフルタイムでこなせるのは
フルタイムで家事労働をしている妻がいるからで、
その家事労働は無償労働に見積もられているのか、と。
彼女がキャリアを中断しなければ、パパさんより高給取りだったのは
確実で、それを妊娠出産育児であきらめた彼女に
言う言葉がそれか?
こどもが熱を出しても帰宅する必要もなく、
ホコリがいつもない部屋が当然のようにあると思ってる?
もしかして、小人を信じている人か?
寝ている間に家事してくれる小人…。
食事は魔法のステッキででてくるとでも?
それでも、彼女は親に強要されて結婚したわけではなく、
自由恋愛を経て、結婚をしたわけで、自分の意思で…
選択した、その選択の重さをいまひしひしと彼女が
私に電話で語ったのをきっと誰かに聞かれたに違いない!
こんなタイムリーな本をおすすめしてくるなんて。

それにしても、あの精神分析の父と呼ばれるフロイトは、
女性は家事に向いている体だと信じていたらしい。
女性のヴァギナが汚いから、それを埋め合わせるために
床掃除をするのだ、と。
いま生きてたら、炎上してるよ…。

フェミニズムとは女性がパイの分け前にあずかろうと
いうことではなく、まったく新しいパイを焼くための運動だと
グロリア・スタイネムは言った。 P94

郵便局の年賀状ノルマのように、同じパイの中で取り合っても
意味がないと思う。我が家が買う枚数は毎年同じなのに、
「今年はうちで買って!」と郵便局で言われたり、
局員の友人に言われたり…パイは同じですけれど。
男女関係なくフルタイム労働をして企業戦士になりたいわけではない。
無償を当然として思われているところには
もう少し可視化されて敬意を持たれてもいいように思う、
家に小人がいて家事と育児をしてくれない家庭においては。

タイトルにあるアダム・スミスは生涯独身で母親が家事を
担当してくれていたらしい。
しかし、アダム・スミスの思想には女性の欠如があった、と。
それはだって、300年前の男性ですから…と言いかけて、
いまでも「誰が稼いでいるんだ?」
「俺と同じくらい稼げるのか?」という男性がいることを思い出す。
300年…瞬間移動したのかもしれない。