ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

『人の心は読めるのか』

『人の心は読めるのか』

人の心を読みたい、操縦したい、という欲望は
きっと誰にでもあるのだろうと思う。
だからこそ、心理学の本はよく売れるし、
私もいろいろと読んできた。
ひとつ言えることは、きちんとした本であればあるほど
人間の心理は複雑である、ということに着地し
そうそう心は読めませんって、となる。
わかっているのに、つい手を出す。
まさか、新しく万能な何かがわかったのか?と。

結論を述べると、わからん!だった。
心理学を20年研究していても、「妻のプレゼントは失敗する」し、
「息子のしつけ」でも悩むし、試行錯誤する。
心理学を20年教えている大学教授でそれなら、
ど素人の私なんて…人の心が読めるわけがない!

それでも、心理学の各種トリックを知っていると、
他人のちょっとした仕草で、あれ…拒否感でてる、
早く切り上げたいってことか、と気づいたりする。
ハンドバッグをテーブルに置かなくても。
エリザベス女王がハンドバッグをテーブルに置いたら
5分以内にディナーを終わらせたいという合図だったとか)

つい感情が表に出る仕草をしている人もいるけれど、
ちょっと心理学や仕草を知っている人だと
その仕草をしたくなったときに抑えたり、逆の仕草で
サインを送ったり(気づくか気づかれないかが置いといて)、
とウソにウソを重ねることも可能なわけで…
その仕草は心理学知ってる人?わざと?と疑心暗鬼になったりする。
筆者は、自分の洞察力を過信しないように、と。

いろいろな心理実験が紹介されていた中で、興味深かったのは
電車の通勤客への実験。
幸福度が一番高いのは3つのうち、どのグループか。
1、誰とも話さない、
2、周囲の乗客とコミュニケーションをとる
3、いつもやっていることをする

実験する前に被実験者たちが予想した正反対の結果がでた。
2の周囲の乗客とコミュニケーションをとったグループが
最も幸福度が高い結果になった。
また仕事の生産性への変化もなかった、と。

これは日本で実験しても同じ結果がでるのかと気になった。
見知らぬ人とのコミュニケーションを楽しめる方だと私は
思っているけれど、
今日の美容師さんとの会話がしんどかった…。
価値観が違いすぎて聞き役に徹したからか、
マンスプレイニングのお手本のような言葉の数々に
ストレスとともに帰宅し、なんだ???
と思っていたときに読んだ本だった。

他者の立場に立つことは難しい。
美容師のお兄さんは言った、
「専業主婦とか家にずっといる人、ハイジンになりそうですよね。」と。
ハイジン?
俳人?まさかの廃人?
美容院に専業主婦のお客さんがいま、いるかもしれないこの状況で
大きい声でそれ言うの?!新人でもないのに?と驚いていると、
「家にばかりいる人は世界が狭そうで!
やっぱり外に出て、人と話さないと!」と言われた。
家にばかりいて、カナダやイギリス、アメリカ、ドイツ…と
各国の友人と話しているけれど、
私の世界が狭いことは認める。
でも、あなたの世界が広そうにも聞こえませんけれど…。
外に出て人に会うって、それは友人知人で、
その世界は何を根拠に広いと思っているんだ?
世界が広い人って誰だ?!と美容室で考えこんでしまった。

本の中でも筆者が他者の視点に立つことの難しさを語る。
想像しても、正しいとは限らない。
所詮、自分の価値観での想像なので。
自分を少しさらけ出し、相手にオープンに聞くことが
大切なようだ…
って280ページ超読んで、結論はやっぱりコレ…。

人間の賢い頭脳がもたらしてくれる最善のものは、
相手の心には自分の想像が及ばない部分があると認める、
謙虚な気持ちなのかもしれないのだから。 p.282