ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

『ベスト・エッセイ』

なぜか無性にエッセイ集が読みたくなって手に取った。
3冊のエッセイ集。
『ベスト・エッセイ2016』『ベスト・エッセイ2017』
『ベスト・エッセイ2023』

この『ベスト・エッセイ』は毎年、新聞や雑誌、書籍などで
発表されたエッセイの中から選ばれている。
それぞれにテーマはいろいろなので読んでいて飽きない。
その時代に有名だった人がでてきたり、
その年に亡くなった人たちの追悼文が多かったり、
年によって当たり外れが多少はあるものの、
世の中にはこんなにも多くの人が文章を書いているのかと驚く。
”小説家”といいながらも文章に面白さがなく途中で放棄したり、
”詩人”という職業ながら文章がとても洗練されていると感じたり
(調べるとカメラの腕前もプロ級と知り、瞬間の切り抜きがうまいのは
カメラで学んだのか?と上から目線で思ったり)
星の数ほどいる小説家にいつも驚かされる。
私が知っている小説家なんて、きっと一握りの超売れっ子なのかと
気づく。
3冊読んでいて”教師”や”先生”について書いていた人たちがいた、
彼らのエッセイは胸に染みた。

1人目は、児童作家として有名で教科書の『ちいちゃんのかげおくり』で
有名な あまんきみこさん。『ベスト・エッセイ2017』
こどもがひとい点数を取った時には「先生がまとめて焼く」と言った担任がいた、
という話。テストの点数が悪いのは先生の教え方が悪いのに親に怒られるのは
かわいそうだ。親に心配をかけまいとする親孝行な子もいる、
それなら僕が、という先生だった、と。

息子が高校受験をしたときのオンラインでお世話になった数学の先生も同じだった。
太郎に最初のレッスンで言った。
「太郎君、もし君がわからないなら、わからないと教えてください。
君がわからない原因の半分は僕にありますから、僕も努力します。
責任は半分ずつにしましょう。」
目から鱗が落ちた。
ブックオフが「買取します」ではなく「売ってください」というのと
同じ言い方を変えただけの気もしたけれど、
「ここがわからなかったです」と息子は先生にはっきり申告できるようになり
言い方はやっぱり大きいのだと改めて思った。

二人目は盲腸の入院時に消灯後に読書をしていた患者を見逃した看護師さん
について書いていた吉村萬一さん。『べスト・エッセイ2017』
自身も高校教師として生徒たちに無駄に細かな規則を守らせてきたけれど
その必要はあったのか、少し、見逃すことで生徒を信頼し、
自主性に委ねるということのほうが規則を守らせることよりも
先生として自分自身に難しかったことを省みて気づく。

ルールや規則を細かく設定すればするほど、それを取り締まる必要性が
出てくるわけで、余計な手間と労力も増える。
そして、そのルールの隙間を狙う人たちもでてくる。
それよりは多少に目をつぶり、「信頼している」と伝えることが
”教育”だろうと私も思う。
「親がいる間にしておいたほうがいいことは?」とこどもに聞かれた。
「失敗すること」と答えている。
怒られてその後の始末の方法も教えてくれるし、処理してくれる親がいる間に
どんどん失敗しなさい!「大丈夫!保護者名は夫だから!」

胸に突き刺さっていた棘をより深く刺してきたのは桐野夏生さん。
『べスト・エッセイ2023』
年代により女友達と距離が縮まったり、遠のいたり、近くなったりしつつ、
50代のいまはまた近づきつつある、という話。
私は逆に距離が遠のきつつあるお年頃のときがいま!
まるで高校入学したときのように友人たちがそれぞれ全く違う道を
歩いているように感じる。違いすぎてわかりあえないわね、と。

最近、我が家の愛犬が散歩を拒否する。リードをつけようとすると
嫌がり、それなら一人で行ってこようかとすると「やっぱり行く!」と
玄関までやってきて、リードをつけようとすると嫌だと怒る。
じゃあ、もういい!ということを数回繰り返し、
「仕方がない」という風に散歩に行く。
こどもたちにも夫にも「なんだ、それ!扱いにくいな!」と言われても
「簡単に操縦できると思わないでくれ!」とでも言いたげに気位が高い。
そんな愛犬の様子を見て、「面倒くさいわね~」と思ってしまった。
その言葉が私にブーメランのように刺さっているのに
桐野夏生の言葉でまた棘まで刺さった。