ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

整理できない

ドラマの話?現実?と、つい聞きそうになった。
そんなニュースがアメリカのパルからメールできた。

「時間があるときに落ち着いて読んで」という警告で始まるメールだった。
彼女は長年連れ添った夫のDVから別居を決意し、
離婚に向けて歩き始めていた。
彼女たちの過去を知っていたので、もしかしたらいつか元サヤに?と
私は能天気に思っていた。

9月某日、彼が彼女のアパートへいきなり乗り込んできたらしい。
彼女を何度も殴り、彼女は悲鳴を上げ、その悲鳴で近隣住民が
警察に通報した。
彼は彼女のこめかみに何度も拳銃を押し当て、
そして発射したらしい。幸いなことに彼女には当たらなかった。
そして、そこへ警察が来て、警察官は武器を下すようにと彼に命じたけれど
彼は警察官に向けて発砲し、警察官たちも彼に発砲した。
そして、彼は自分に拳銃を向けた。
彼のお葬式を彼女はした。

そんな要点だけのメール、何度読んでも、はい?はい?はい?で
全く理解が追い付かない。DV夫に成り下がった彼はついに拳銃をもって
襲撃した?彼女を撃った?警察官を撃った?
最後には自分を撃った?
それでもって、そんな彼のお葬式を彼女がした???
もう全くわからない。
なんで彼の家族や親せきがお葬式をしないんだ?
まだ”妻”だったとはいえ、撃たれた彼女がお葬式の手配をする???
そんなことある?と疑問だらけでメールで聞くと、
「彼は最後の数か月、薬と女性にお金を使い果たし、
家族や親せきに借金を重ね、誰にも返済せずだったから、
誰も彼ともう関わりたくなかった」と。

ドラマのような話だと日本で呆然としているのに
どれだけ調べてもニュースにもなっていないことに驚く。
ニュースにもならない出来事なのか、と。

こめかみに拳銃を押し当てられ、息子のことを神に祈った、と
いう彼女の一文に覚悟を決めたことをありありと感じた。

私は彼女の手紙でしか彼のことを知らないけれど、最後の数年より前は
よくいる誰もが簡単に想像できるアメリカの中流白人男性だと思っていた。
体もでかく、家族思いで、バレンタインや記念日には妻とデートに行き、
ちょっと飲みすぎてしまうけれど…。
バイデン大統領になったとき、彼が泣いていると彼女が言っていたことを
昨日のことのように覚えている。
「もし、トランプがまた大統領を続けることになるのなら、
安定した仕事を捨ててでもカナダへ移住することが妻とこどものために
必要だろうと覚悟していた。僕はまだアメリカに住める。」
そう言いながら号泣する大男、
政治的な彼女とは違い政治には無関心だった彼ですら
アメリカからの脱出を家族のために覚悟した、
家族思いで繊細な大男、それが私の彼のイメージのすべてだった。
そんな彼が数年後に彼女にDVして、
悲劇的な人生の終わりを迎えるなんて、
タイムスリップして過去の私と彼女に言ったところで、
一笑に付したことだろう。

「私はまだ選択ができる、彼はもうできない」と
彼女がメールの最後に書いていた。
私はまだ全く整理ができない。