森茉莉の『父の帽子』を読んだ。
父の帽子 (大活字本シリーズ) (2001/01) 森 茉莉 商品詳細を見る |
彼女が16歳の時に、父、森鴎外は亡くなったので、
”彼女の中で森鴎外は美化されている”と聞いたこともあったので、
どれどれ、どれほど美化されているんだろうという興味が大半。
森茉莉って、きっと親の七光りなんだろうなぁ~、
読破できるかしら?と読み始めたけれど、午前中、ずっと読んでいた。
不覚にもちょっとほろっときてしまったほど。
それは、彼女と彼女の弟の不律が百日咳に罹り、
医者から彼女が余命宣告されたとき。
不律は前日にすでに死に、鴎外とその妻は医師から安楽死を薦められる。
鴎外が夫と父をしていた姿が娘の目線で描かれていて、
「上から目線で、嫌な奴!!」といままで読んでいた鴎外だったけれど
ちょっと視点が増えた。ええ、変わるほどではない。
しかしまぁ、あっぱれ!というほどに父、鴎外の欠点は書かれていない。
いかに娘に甘い父であったか、
田舎者かのように扱う西洋料理店の店員に非の打ちどころのない
英語で切り返したただとか、
小さなことですぐに腹を立てる父だったけれど、
それらも含めて大好きだったとか。
ドイツから取り寄せて服を作ってくれた、とか
もうそれはそれは…ごちそう様!です。
ここまで行けば、本当に”美化”に違いない。
思春期がくれば、自分の視点を持ち、一番にすることは
”親への批判”と保健の時間に習ったけれど、思春期はなかったのか?と
呆気にとられてしまった。
その分というか、母への思いはいろいろあったようで、
お母さんへの記述は細かく、そして、鴎外へよりも自然で温かみがある気がする。
その差が、実は鴎外と接した時間は短かったんだろうなぁと思ったり。
娘の母への視線は常に厳しいものなので、まぁ、このくらい許容範囲内かと。
ほぼ同じ屋敷に住みつつ、ほとんど記述のない兄(異母兄)の存在のほうが
私には大いに気になった。
私の父は、偏頭痛の持病があって、たまに頭痛がすると有給で休み、
休暇を楽しむ…ええ、ずる休みですよ、どう見ても。
父は好みのタイプは「白痴美人」と言うような人で、
母や私や妹に言うたびに、散々に言われるのに意に介さず、
「だから、母さんや娘たちが美しい」と言い、
余計にむき~!!と私たちを怒らせる、そんな人。
こうやって父のことを書けば、やっぱり褒める一方は無理で、不自然。
”結婚相手は父親に似た人を選ぶ”と聞くので、どうなのだろう?と
思っていたら、うちの夫は、釣り好きで、ずる休みで趣味の釣りにでかけるような
本当にちゃらんぽさが父そっくり。
この人なら、きっと人生を一緒に謳歌できると思ったのに、
夫は子どもが生まれてから急に”家族のために”とか社会的責任を感じて
仕事に邁進するようになったけれど。
旧漢字の本を久しぶりに読んで、大学時代を思い出した。