大人になってからピアノに手を出す人の本に惹かれる。
『やくざときどきピアノ』はピアノを弾いたこともない
やくざ専門ルポライターの手に汗握るピアノ練習日記だった。
『老後とピアノ』
こちらはピアノを小学生時代に習い事としてしていたものの
遠ざかり40年越しに始めた練習日記。
大人になってからピアノを弾く人たちの練習日記は
肩の力が抜けていて、とてもいい。
いや、本人たちはとてもまじめで、発表会に怯え、
ままならない指に苛立ち、ということはあるものの、
子どもたちが背負っているプレッシャーはない。
小学生なら楽譜はどのへんまでいってる?とか
このくらいの難易度の曲は弾けるの?なんていうことを
聞かれる。大人には「練習しなさい!」と言う親もいない。
プロにしようと思っていなくても、つい「練習しなさい」と
こどもに言ってしまう親の一人としては、
こどものピアノとは立っているステージが全然違うなぁと
若干、羨ましくなる。
『老後とピアノ』の作者は元新聞記者。
競争に負けないためにエネルギーと時間を仕事に捧げ続け、
生産性と効率性を求めて生きてきた中で、ピアノを習い始める。
生産性も効率性も感じられない50過ぎの手習い。
それを書いて仕事にして、飯のタネにしようじゃないか!というところに
さすが大人のガッツだわ、と思ったりもしたけれど。
友人や知人にもこどものときに習った楽器を聞くと
ピアノ、バイオリン、フルート、お琴、と各種、でてくる。
「あの練習時間が好きだったの~」という人は一人もいない。
でも、数人は大人になってから練習を再開し、習い始めている。
こどものときは好きではなかったのに、いまは楽しめる、と。
大人になって再開するときこそ、音楽を楽しむ余裕もあるのかもしれない。
生産性や効率性や才能などを考えずに。