ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

分限者


私はよく周囲の人から”気前がいい”と評される。
我が家にたくさんあるものはおすそ分けをどんどんするし、
私が使わない化粧品のサンプルもどんどん友人にあげる。
私の家で使われないまま年月だけ経るよりも、使われる人のところへ!
そして、いつか私のところへもっと大きく良いものになって帰ってこいよ~!
と思っている。

気前がいいほうだと思っていたけれど、夫に
「これだけはコレクションするの?」と言われるものがある。
なんとでも言ってくれ!
これだけは譲れない!
どれだけ場所をとろうとも、どれだけ頻度が少なかろうとも…と
死守しているものがある。
それは”着物”。

母が誂えた小紋(しつけつき!つまり、未着用!)だけで5,6枚、
しつけつきの名古屋帯に金糸がふんだんな袋帯に…
木綿もウールも正絹も羽織だけで20枚近くある。
洗える着物は1枚しかない。(唯一、私が買ったもの)
肌襦袢だけで4枚もある!
母がくれた着物に、今は亡き祖母の着物、叔母が縫ってくれた着物に
叔母が日舞を習っていた時の練習着物に、
ご近所さんにいただいた着物に…
身長が高い私にはあちこち丈が足りない着物ばかりで、
初心者には着付け泣かせ。おはしょりなんてない。
それでも、たまに眺めて満足する。
帯だけ練習してみたりもする。

そんな私に母が断捨離をしたということで、
押し入れに眠っていた”母がもらった着物”を大量に持ってきた。
夏の着物、絽の着物が数枚!
絽だわ、絽!この暑い夏に着物なんて着れないけれど、
絽の着物を誂えることもなく人生終わりそうな私に絽の着物が回ってきた!
しかも夏の帯も5枚!
そして、羽織だけで20枚…毎日羽織を着替えても2か月分はあるんちゃう?
というくらいに羽織だらけになった。
道中着も。
普段に着物を着ていた人かな?というような木綿やウールの着物も。
日本舞踊の人かな?というような”三代目”と書かれてある着物も。
きっと毎日着物を着ていた人だけれど、おしゃれ着がなかなか高価な
着物で、「いやぁ~、これはなかなか…」と感心していたら、
「分限者さんだったって聞いたわ。」と。
へぇ~、分限者(ぶげんしゃ)さん、納得だわ!と母と会話した。

着物を衣紋掛けにかけながら、久しぶりに”分限者”って聞いたわ!と
懐かしくなった。
祖母も昔よく「あそこは分限者だから」と言っていたわ~と
夫に話すと、「ブゲンシャって、なに?」と聞かれた。
夫は聞いたこともない言葉だったらしい。
こどもたちに「分限者って知ってる?」と聞くと、こどもたちは知っていた!
・・・ということは、私が言ってるのか?”分限者”って?
そんな家、近くにないけれど…。

分限者は金持ち、という意味で使うけれど、成金ではなく、
元々の資産家、とか名家、という意味で祖母は使っていた気がする。
私もそういうイメージで使っていた。
こどもたちも同じように思っていたが、夫は一度も聞いたことがなく、
「いま一部地域にしか残っていない言葉のようだけれど」とすら言う。
分限者、言うわよ!!
・・どういう漢字を使うのかはいままで知らなかったけれど。

絽の着物に絽の帯に、さすが分限者!!とため息つきながら着物を触った。
エアコンの下で帯の練習をしただけで、汗が流れてきたので
暑い夏に着物を着る気力はないけれど、
誰にも譲れない!!と着物に関してだけは強欲ばばあがでてくる。
着物って、怖い。