ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

『恐れのない組織』

『恐れのない組織』

 

 

心理的安全性”というキーワードを行動心理学の本で知ったとき、
とても興味を抱いた。
本書で語られるのは組織の中における発言のしやすさ、
意見を言うことができるかどうか。
無知だと思われるのではないか、評価を下げられるのではないか、
そういうことを臆せずに、ではなく、気にせずに意見を言える、
そのために必要なことが”心理的安全性”である。

いくつかの興味深い例があった。
例えば、病院内で優秀なチーム(と筆者が考える)とそうではないチーム、
どちらの医療ミスの報告が多いか。
それはもう「優秀ではないチーム!」と思えば、そうではない。
優秀なチームのほうが医療ミスの報告は多い。
それはなぜか、そこにはミスを報告しやすい環境があった、
そして、その結果、ミスから学び対策をとることができ、優秀になる。
医師にその処方があっているかの確認ができる、
その”心理的安全性”こそ重要だ、と。

学歴やジェンダー、興味関心が同じ人を集めてグループを作ったところで
心理的安全性はつくられないらしい。
それは、主に”リーダー”によって作られる、というところも
とても興味深い。

そういうことなら、日本の十八番ではないか!と思ったら、
日本の例が挙げられている。
本書の中では情報を共有し、弱点を見せ、協力を仰いだリーダーとして
賞賛されていた人物、私は知らない人だったのでググったところ、
関連会社の社長となり、「コミュニケーション不足」で新聞に載っていた。
コミュニケーションを褒められた数年後、
コミュニケーション不足で新聞に載る…。

心理的安全性により多くの人が発言することにより、新しい見解を知り、
より生産性や安全性、または収益性が高まっていく。
そんなリーダー…私はここ数十年、出会ってませんけれどね!
多くの場合、心理的安全性がない日本社会では意見を言わないことが
出世への道であり、美徳であり、多数派になることが正しい。
「俺は意見を聞くリーダーだ」と言った人が本当に「聞いた!却下!」だったり、
「女性らしい細やかなリーダーになる」と言った人が、
「まずは私に一度話してくれる?」と各種、細かい要求をしてきたり…
(直属の上司ではないのに?!)
「僕の力不足でした!」と言った会長が「誠実だ」と称賛されたり…
(力不足だとわかったなら、ほかの人にその仕事を頼むこともできただろ?
その次の手はないのか?!と呆然)

リーダーたちの古さにも怒りに震えるものがあるけれど、
多くの人たちが心理的安全性がないからか、消極的賛成をしたり、
無関心になったり、アルコールが入らないと文句を言えなかったり…
という現状にうんざりを通り越して失望、絶望していた。
そんな中、意志ある人たちが立ち上がって意見を言う様子に密かに感動した。
(その多くが女性たちだった!!あんなに偉そうに私の前では言ったのに
会議には参加すらしない年上男性たちに頭の中で自主規制の悪態をついた)
のみならず、その女性たちは活動を開始した!
「メイさんが動いてくれたんだもの。私たちも!」と。
かっこよすぎる!!私より30上の女性たちに痺れた。
某有名企業の重役だった、お偉いさんだった、みたいなおじいさんたちは
みな所用があるという中、きっとずっと専業出主婦だったおばちゃんたちが
ネットで調べたり、電話をかけて回ったり、署名を集めたり、
積極的に意見交換しにでかけたり…
日本企業で出世するのはこういうおじさんたちか、と思う反面、
だから…(自主規制)…なんだよ、と思ったり。

「いままで何も知らなかった!」というおばちゃん、おばあちゃんたちが
いまや専門家!
「メイさんは知っているでしょうけれど…」と社交辞令でつけてくれるけれど
私が知っていることなんて、ほとんどない!
「どこで知ったんですか?」「どうやって、そこへたどり着いたの?」と
感心しながら聞き役になってしまっている。
それでも、私の得意分野で私が得た情報を共有すると
「もうちょっと詳しく」と言われたり、「もう一回説明して」と後から
lineがきたり、とすごく熱心に聞き役にもなってくれる。
みんなそれぞれに専門性をますます発揮し…というこれこそが
心理的安全性”なのだろうな、とおばちゃんたちの会合に参加して思った。
そこにリーダーはいない。
みんな「専門家ではない」とわかっている。
知り得た知識の共有と共通の目標だけ。
会合の帰り、「今日も痺れた…」とおばちゃんたちに圧倒された。

本書はとても読みやすかったけれど、1点、「ルー(大柴)すぎる」と思う。
エビデンス(根拠)はもう日本語になっているのかもしれない。
ブレイクスルー(突破)も、まあいいか。
ベスト プラクティス、ナレッジの共有、フィアレスな組織、ステークホルダー
(最善の方法、知識の共有、恐れのない組織、利害関係者)
これらはまだ浸透していないのでは?と思った。
フィアレスな組織、を私はフェアレスな組織、と読み、
不公平な組織???と思っていたけれど、
fearless、フィアレスな組織って、タイトルでは”恐れのない組織”って
なっているのに、この一貫性のなさは?と気になったり。
私も日本語がルー化しつつあることに危惧を覚えて日本語の本を読んでいるのに
そこでもルーになっているとは。
この前、出てこなかった単語、つい会話で言った。
「逆 overestimateってこと!」
みんなの頭に疑問符を打ち上げた…”過小評価”って言いたかったの~!!
日本語、意外にでてこない。