ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

セーフティーネットはどこ?

去年、ショックなことがあった。
中1の太郎が「隣のクラスのA君と話した」と
我が家の穏やかな夕食タイムに話し始めた。
クラスの友達と帰っていると、隣のクラスのA君が方向が違うのに
一緒に帰りたいと言い出した、と。
親から暴力を受けていると言う。

中学生は反抗期だから、多少の手が出たのかもね、と
つい思ったら、太郎たちはA君の体の痣の数々を見せられたらしい。
夕飯も与えてもらえない時がある、と。
「お母さん、A君を助けてあげて」と言われたけれど、
それはまずは中学校の先生に相談したら?と言うと
「先生たちは知っている。Aくんは毎日遅刻してくるらしいし、
体の痣を体育の先生に聞かれていたこともある。」
それでも放置…?
それとも対策や報告をしてこの状況?
我が家の穏やかな夕飯タイムが一瞬にして変わった。
私と夫の中では選択肢はふたつ。
「法的機関に電話するのは私か、夫か。」

夕飯の間に電話をした。
私の知りうる限り(つまりその日に太郎が知った情報のすべて)
ではあったけれど、Aくんは親の虐待で施設にいたこともあった、
ということまでA君が話したらしい。
(別のクラスの太郎たちに?それはもうSOSだわ…と思った)
そのことを告げると、「データーベースで確認します」と言われ、
「あぁ…」と。データーベースでヒットしたらしい。
「ヒットしたんですか?」と聞くと、
「お答えできません。」と言われたけれど、
「あぁ…(この子か)」の、「あぁ…」だった。
これから各所に事実確認をします、ということで電話は終わった。
(そしてその後についての電話は予想通り一切ない。)

これだけでは不安で、知り合いの民生委員さんにも相談。
民生委員さんは中学校区の問題として取り上げ、
中学校や市まで連絡しました、という話だった。

その後、何か変化はあったか?全くない。
A君の遅刻は減ったらしい。
それでも、もしかしたら虐待の事実をどこにも報告せずに
放置していた中学校に地域の目が知りましたよ!と
通告し、問題として共有されただろう、と思いたい。
すでに地域の問題として取り上げられているかもしれないけれど、
と思ったら、全く知られていなかった。
本当に失望しかない意識低い系の中学校。

その中で、私が一番ショックだったことはAくんが在籍するクラスの
生徒たちの多くは虐待されている事実を知っていたこと。
「毎日虐待について語っているよ」と言っていたらしい。
それでも、親には誰も話さなかったのか。
聞いたけれど、親は動かなかったのか…。
中学生に何ができる?とは思うけれど、
「親に言うことはできる」だろう!
太郎は私が「電話した!報告したから!」と言うまで、
「なにかしてあげて、お願い」と言い続けた。

私自身はその子の痣を見ていないので、
もしかしたら中学生の息子の話に多少の脚色はあるかもしれないし、
実際にはその事実はないかもしれない。
それでも、もし、ニュースで見るような虐待死になったら
私も知っていて動かなかった一人になってしまったら嫌なので
ここはやりすぎかもしれないけれど、一応、報告させてください、
と電話した。

虐待をされる子どもの悲惨さはよく聞くけれど、
虐待を止めることができない親も悲惨だと思う。
誰かが介入してくれたら、どちらも不幸な結果にならないのに。

数人の知り合いに、この話をすると、
「よく動いた!天晴!」と言ってくれた人もいれば、
「他人の家庭に首を突っ込むなんて、トラブルに巻き込まれるよ」
と言う人もいた。
その人の子どもは痣を見ても親に言わなかった一人。
子どもは親の鏡で、親の価値観をすごく吸収すると改めて思った。
毎日反抗期で、きぃー!いらぁー!うっさいわ!と
太郎と言い合っているけれど、見て見ぬふりはできない、
そのままの優しい人間性で太郎には成長してほしい。