ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』

人は誰もが失敗し、ミスをする。
問題は、その失敗から何を学ぶか、どう次に生かすか。
失敗に対する考え方を否定的なものからもっと肯定的に捉えたい。
そう考えていて買った一冊。
『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』 

失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

 

 本書で知ったことはいくつかあるけれど、意外だったことは
航空業界の失敗における考え方。
航空業界は”不測の事態はいつでも起こりうる”という認識があり、
過去の失敗から学ぶ努力を絶やさない。
その結果が驚異の事故率、フライト100万回につき0.41回

失敗から学ぶプロセスを最も重視しているといわれるIATA加盟の
航空会社に絞れば、830万フライトに1回。

(IATA加盟の航空会社、日本ではJAL,ANA,NCAの三社)

注目すべきところは失敗の頻度や多さではなく、
失敗に対する”姿勢”なのだと筆者は言う。

失敗は特定のパイロットを非難するきっかけにはならない。
すべてのパイロット、すべての航空会社、すべての監督機関にとって
貴重な学習のチャンスとなる。

この考え方こそが失敗を生かす姿勢であり、私自身も見習いたい。
逆に医療業界では”隠す”とまではいかずとも”婉曲表現”により
あえてミスを言わない姿勢があるという。
そして、それが医療訴訟へとつながる。
医師が真相を明らかにして正直に話したほうが結果として
医療過誤で訴訟を起こされる確率が下がったという調査結果もある。
「人はミスをする」「完璧な人はいない」
そう皆がわかっている中で、それでもミスが起きた時、
いかに繰り返さないかに焦点を絞ることはミスが許されない
という点では同じ医療業界や航空業界において、
相反する姿勢を取り続け、相反する結果を出している。
イギリスでの医療過誤は10人に一人(2005年)。
フランスでの医療過誤は7人に一人という結果もある。

なぜ医療過誤やミスは起こるか。
能力的に足りていないから、という回答にはならないだろう。
なぜなら、医師免許などを持っていて真面目に取り組む人たちなのだから。
それでは、そこにミスが起きやすい何かがあるはずだ…
というシステムの話や医療過誤に気づいても止められなかった社会的圧力、
という問題提起へとつながっていく。

失敗は起こる、この前提を忘れてはいけない。
その失敗を次への踏み台とするために必要なことは
ミスを起こさないシステムの改善、
マインドの改善、(ついついしてしまう自己正当化とか…)
そして、果たして意味があったのだろうか?と検証することだろう。
本書の中で検証する機会に恵まれない、または検証しにくいと
考えられているためにその道何十年の人と入りたての人が
ほぼ同じ精度…な職種が紹介されていて、その意外性に驚いた。
その職業は…って言えません!怒られますって!!
日本とアメリカでは違うかもしれないし…と逃げる。

この本でいくつかの新しいキーワードに出会った。
「認知的不協和」「確証バイアス」「事前検死」。
特に面白かったのは”事前検死”、その語義矛盾ぶりが混乱させる。
英語ではpremortem、直訳でそのまま事前検死、
なので、アメリカのパルたちに新しく出会った単語が面白いと
premortemについて話すと,「どういう意味???」と混乱していた。
起こりうる失敗を事前に予測する、ということ。
成功するには…ではなく、「失敗した!さて、理由は?」と
みんなで失敗を前提に考えていくこと、らしい。
危険予知となにが違うのだろう?と謎がいっぱいで、
ますます読む本を増やした気もするけれど、新しい言葉にわくわくする。

久しぶりに紙ではなくAmazonkindle本で読んだ。
kindle本は頭に入りにくい気がして紙の本ばかり読んでいたけれど
引きこもりの今はkindle本を買ってみた。
素敵な文章にはkindleの機能、ハイライト(マーカーを引くようなもの)、
とした結果、読み終わるとハイライトで本の内容が何度でもくっきりと
浮かび上がり、とても良い。
紙の本にマーカーを引くことには躊躇するけれど、電子本なら気にならない。
新しく知った単語にはハイライト、
胸に刻みたい文章にもハイライト…。
kindle本もいいかもしれない、と思ったけれど、ますます
本屋の閉店を加速させる気がするし、
kindle本を読んでいるのはスマホを見ているだけにしか見えない。
こどもたちに「読書をしなさい」と言いつつ、
私の読書はスマホをしているように見えることが気になったり。