ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

お盆


お盆に我が家の愛犬が突然、台所にいる私に向かって
吠え始めた。
驚いた中3の太郎が駆け付け、
「母さんの上に吠えている…」と呆然として言った。
私が近づくと、一緒に動く何かに怯えるように
その後も数分ほど愛犬は吠え、
「なに?」
「なにがついてる?」と私と太郎もパニック。
背中にカメムシやゴキブリでもついているのかと背中を
見たけれど、何もなく…
「母さんより上に目線がある」と愛犬の様子を太郎もコメント。
なんで?どういうこと?!と二人と1匹でパニックになっていたけれど
そうか、お盆か…と気づく。

お盆に我が家に来る人…
えーっと、私の母方の祖父母に、父方の祖父母に…おばちゃんに…
夫の両祖父母に…いまやあっちの世界にいる親戚も増えてきて、
誰が訪ねてきたのかもうわからないわね~とほほえましく
会話していたのに、末っ子の「親戚だったらいいけれどね」の一言に
家族で固まる。
そういうのやめて!いま、お盆だから!

そんなお盆に、またあちらの世界の住人が増えた。
前の家のお隣さんで、かれこれ18年の付き合いだった。
ご近所づきあいも薄くなりつつあるとは言われているけれど、
そのおばちゃんとは砂糖やみりんの貸し借りもしたし、
おかずのおすそわけもしたし、植物の株分けももらった。
我が家が静かだと「誰が病気なの?足音が聞こえない」と心配し、
(元気なときはうるさいんですね…と汗が噴き出る)
我が家のこどもたちのピアノの進捗状況を一緒に喜んでくれた。
おばちゃんがピアノを弾き始めると、「あななたちも練習しなさい!」と
練習をこどもたちに促したり、
「花子ちゃんのいま弾いている曲、楽譜また見せて~」と言われたり、
隣の家なのにこどもたちは年賀状を出し続けた。
「ちょっとしんどくて受診したら、入院って言われたから」と
入院準備の買い物を自分でして入院したおばちゃんがそのまま帰らなかった。

コロナがまた流行り始めた時期で危篤になってもお見舞いにも行けず、
お手紙を家族みんなで書いて息子さんに渡したり、
息子さんが私たちの動画を撮ってお見舞いに行って見せたり、
状況もよくわからないままおばちゃんが旅立った。
まだ信じられない。
全く実感がない。
電話したら、出そうな気がする。
庭で植物に水をあげていそうな気がする。
もしくは、裏庭で手が痛いって言いながらも草抜きしてそう。

「母の遺言で、もらってください」と息子さんから大量の楽譜をもらった。
年齢不詳のおばちゃんで、こどもたちは
「ああいう人が魔女って言われていたんだと思う」と言うほどの
元気さと変わらなさだったのに…。
あちらの世界の人がどんどん増えていき、
お盆に帰ってきた人が誰なのかわからなくなってきた。