ショコラ日和

海外文通を通して、世界の友達と井戸端会議しています。

化学でオーバーヒート

化学に夢中な花子とお話をしてみたい、
有機化学の研究者に言われた。
私の想像では「有機化学の何が楽しい?」とか
「好きな化学反応は?」みたいな世間話?をするのかと
思っていたら、どんな話をするか考えるので
ちょっといくつか質問を…ということで
「SN2反応知ってる?」
「鈴木宮浦カップリングってどんな反応か知ってる?」
という質問で、・・・まずい!と気づく。

鈴木宮浦カップリング、それおいしいの?レベルでしたが、
ネットで調べていくつかわかった。
2010年ノーベル化学賞を受賞した鈴木宮浦クロスカップリングだった。
化学に詳しくない私にはよくわからないけれど、画期的らしい。
わかりやすそうな説明がされているところをネットでいくつか見つけ印刷し、
熟読…してもわからないので、いつものように化学の塾で聞くことになった。

化学の塾で、先生に呆れられた。
「これはちょっと中学生にはむずかしすぎる。」と。
レベル的には大学3年生だそうで、もちろん、文学部の3年生ではなく、
理学部の有機化学を専攻している大学3年生レベルらしい。

そんな話のあれこれを夫に語ったところ、
「そもそもメイさんが花子のレベルを高く言い過ぎたのではないか」と
言われた。
「うちのこ、とーってもよくできるんざます、おほほほ。」と。
いや、無理。
なんせ私が化学がわからないから、花子のレベルを聞かれても
答えられないもの。
だからこそ、今度、話をする研究者も「これ知ってる?」と花子さんに
聞いてみて、という方式でレベルチェックしたんだと思う。

夫は難易度の高い化学の話題についていけなくて花子が
困るのではないか?と思って心配しているようだった。
予習しておかないと困るわよ、と私が何度も言っているので
以前から知っているあの先生と話ができるチャンスと花子も喜んでいるだけに
「全くわからん!!」と花子はお尻に火が付き、連休中、
「あかん、もう頭から煙出る…熱出てない?もうオーバーヒート!」と
何度も言っていた。
うちの花子、こんなに頭を使うの久しぶりかもしれん!!と
親として私は嬉しい。

夫はそんな花子を心配しているようだけれど、
正直、ここまで追い込まれて勉強するなんてことは学校のテストでもないし、
化学グランプリを目指しているいまもない。
「化学グランプリ一次試験、どうせ通過しないし~」とのんびりやっていただけに
いい機会だと私は思っている。

そもそも花子は全く損をしない。テストではないからわからなくても困らない。
多分、1対1での会話なので、花子がついてこれてないなとわかったら
相手もレベルを下げるだろう。
思ったより化学わかってないじゃん、と思われることはあるかもしれない。
それは残念ではあるけれど、私が花子の実力を過大評価し過ぎただけということ。

「どうしよう。わからないかもしれない。」とウォーレンを必死に読みながら
花子はぼんやりしかわからないクロスカップリングに焦っているけれど、
いま完成を求める必要はないのだから、いまの花子ができる限りの下調べと予習、
勉強をして挑んで、精一杯の姿勢で先生から学べば、
わからなくてもそれを不愉快に思う先生ではないと思うよ、と花子には伝えた。

「メイさんは一体、なにを先生に言ったわけ?」と花子がなぜそれほど
高いレベルだと思われたのかと夫は何度も質問してきた。
多分、戦犯は私ではなく『ウォーレン有機化学』。 

 花子がウォーレン読んでいるっていったら、「ウォーレン読んでるの?!」って
驚かれた本で、それだけで優秀扱いされる本だった…のか?
それならそうと『ウォーレン有機化学』の帯に
「他言危険!過大評価の恐れあり!」とか書いてほしいわ~。
ウォーレンって、言うんじゃなかった…
花子がウォーレンをどのくらい理解しているかとか私にはわからないのに…と
私もその反応の大きさに怖気づいた。
有機化学における『ウォーレン』、そのすごさを思い知った。